The Long Wait フライヤー [PDFファイル/3.37MB]
愛媛県中山間地域に位置する町立久万美術館では、2025年度自主企画展として、現代アートの領域で活動を続けてきた愛媛県出身の美術作家・菅亮平の個展を開催する。菅は、「空虚(ヴォイド)」を主題に、多様なメディアを駆使しながら、世界の不確かさや記憶の残滓を辿るような探求を行ってきた。本展では、松をめぐる文化史を主題に据え、自然豊かな立地にある当館の環境や久万高原町の歴史と響き合う展示構成となっている。
菅が松に関心を抱いた契機は、広島において出会った被爆した能道具にある。2023年、能を主題とした制作に取り組み始めた菅は、能舞台の空間性に注目し、とりわけ舞台に描かれる松の絵に着目した。松は、冬でも青々と葉を茂らせる常緑樹として不老長寿の象徴とされ、影向──すなわち神の降臨を受ける樹木として──信仰の対象ともなってきた。日本人は、松に永遠性と超越性を託し、造形を通してその理想像を追求してきたのである。
他方、菅はこのような象徴的意味に加え、松煙墨や松根油といった、松が人々の生活において果たしてきた実用的側面にも強い関心を寄せている。本展では、象徴性と実用性という両義的な観点から松の文化史を見つめ直し、日本人の精神と生活に深く根差してきた松の多様な相貌と、菅がこれまで追究してきた「空虚」とを交差させ、「松の空虚」を多層的に浮かび上がらせる。また本展は、かつて松林が広く分布していた頃の久万高原町の風景に想いを馳せ、その記憶を呼び起こす試みでもある。
展覧会タイトル「The Long Wait(「長い待ち時間」の意)」は、「松」の語源を「待つ(wait)」とする説に着想を得ており、時の流れの中で人々が抱いた祈りや期待を想起させる。旧久万町出身の母をもつ菅は、自身も久万の自然の中で多くの時を過ごしたという。自己のルーツとも言うべきこの地で、日本文化の本質である「自然との関係性」を問う、作家の新たな展開にご注目いただきたい。
菅亮平
無題 / Untitled
2025年 / 116.7 × 91.0cm / キャンバスに松煙墨
菅亮平
Waiting for Deity - Yogo no Matsu at Kasuga Taisha
2023年 / 38.0 × 57.0cm / インクジェットプリント
ほか
2025年9月13日(土曜日)~12月7日(日曜日)
9時30分~17時(入館は16時30分まで)
月曜日(ただし、9月15日、10月13日、11月3日、11月24日は開館)、9月16日、9月24日、10月14日、11月4日、11月25日は休館。
※9月13日は開展式開催のため、13時~14時30分の間は展示室への入室を休止します。
前売券(一般のみ) |
500円 |
一般 | 1,000(700)円 |
高大生 | 400(300)円 |
小中生 | 300(200)円 |
※前売券は8月下旬頃より県内プレイガイド等で販売開始。
※()内は20名以上の団体、高齢者(65歳以上)の方の割引料金。
※障害者手帳(身体障害者手帳・精神障害者保健福祉手帳・療育手帳)をお持ちの方とその付添者(1名)は無料。
45台(無料)
町立久万美術館、久万高原町、愛媛新聞社、愛媛CATV
南海放送、テレビ愛媛、あいテレビ、愛媛朝日テレビ、FM愛媛、高知新聞社、RKC高知放送、愛媛県、愛媛県教育委員会、松山市、松山市教育委員会、久万高原町教育委員会
一般財団法人 自治総合センター、公益財団法人 野村財団、公益財団法人 朝日新聞文化財団、公益財団法人 花王芸術・科学財団
※すべてのイベントの内容は変更になる場合があります。
本展担当学芸員を聞き手としたギャラリーツアーです。本展の主題である「松の空虚」をめぐって、その背景を踏まえながら作家自身が作品解説を行います。
菅亮平、本田李璃子(町立久万美術館学芸員)
9月13日(土曜日) 15時~16時
町立久万美術館展示室
無料
※要観覧券
事前申込制(先着順)となります。電話またはWebからお申し込みください。
※当日の飛び入り参加も可能ですが、事前申込の方を優先させていただく場合があります。
※いただいた以下の個人情報は適正に管理し、延期・中止など本事業に関するご連絡のみに使用させていただきます。また、第三者に開示・提供することはありません。
【電話】
電話番号:0892-21-2881
※参加者の氏名、年齢、住所、電話番号をお聞きします。
【Web】
応募フォーム<外部リンク>からお申し込みください。
※お送りいただいたメールを確認後、美術館から受付完了メールを送信します。
(1~2日程度時間を要する場合があります)
応募受付のメールが届かない場合は、美術館(0892-21-2881)にご連絡ください。
『崇高の修辞学』などの著作を通じて、西洋近代における「崇高」の概念をひとつの基軸としながら、美学とその周辺領域との関わりを探求する美学者の星野太氏を迎え、菅の主題としてきた「空虚」をめぐる創造性について議論を深めます。
菅亮平、星野太(美学者 / 東京大学大学院准教授)
9月20日(土曜日)14時30分~16時
町立久万美術館
無料
※要観覧券
事前申込制(先着順)となります。電話またはWebからお申し込みください。
※当日の飛び入り参加も可能ですが、事前申込の方を優先させていただく場合があります。
※いただいた以下の個人情報は適正に管理し、延期・中止など本事業に関するご連絡のみに使用させていただきます。また、第三者に開示・提供することはありません。
【電話】
電話番号:0892-21-2881
※参加者の氏名、年齢、住所、電話番号をお聞きします。
【Web】
応募フォーム<外部リンク>からお申し込みください。
※お送りいただいたメールを確認後、美術館から受付完了メールを送信します。
(1~2日程度時間を要する場合があります)
応募受付のメールが届かない場合は、美術館(0892-21-2881)にご連絡ください。
数多くの写真・映像論の著作や翻訳で知られる美術評論家の伊藤俊治氏を迎え、菅がこれまで一貫して取り組んできた表現手法である模型と写真の関わりについて、その歴史的変遷を踏まえながら、多角的な検証を行います。
菅亮平、伊藤俊治(美術評論家 / 東京藝術大学名誉教授)
11月8日(土曜日)14時30分~16時
町立久万美術館
無料
※要観覧券、要予約
※詳細は後日当館HPにてお知らせします。
本展担当学芸員が、出展作品について、その主題や背景、手法、制作プロセスなどの観点から、ギャラリーツアーの形式で解説を行います。
本田李璃子(町立久万美術館学芸員)
9月27日(土曜日)、11月3日(月曜日・祝日)、11月22日(土曜日) 各14時30分~15時
町立久万美術館展示室
無料
※要観覧券、予約不要
本イベントは、菅の表現手法である模型写真を体験するワークショップです。参加者は、ワイヤーを使ってそれぞれが思い描く木の模型を作ります。それらを並べて架空の森(イマジナリー・フォレスト)のジオラマ模型をつくり、影絵遊びのように模型に光を当ててその影を写真で撮影します。影や写真という要素を通じて、思いもよらぬ姿にイメージが揺れ動く様子を楽しむことができます。プリントした写真はお持ち帰りいただけます。
菅亮平
11月9日(日曜日) 13時~16時
久万高原町立図書館(愛媛県上浮穴郡久万高原町久万1484−1)
小学生以上
無料
※要予約
※詳細は後日当館HPにてお知らせします。
11月3日(月曜日・祝日)
当日はどなたも無料でご覧いただけます。
町立久万美術館
Tel:0892-21-2881