○久万高原町集団救急事故救護活動計画
平成17年1月1日
消防告示第5号
第1条 目的
この計画は、地震、風水害等の自然災害及び車両の転落、衝突、転覆、航空機の墜落事故、ガス爆発、その他の災害又は事故で、局地的かつ短時間に多数の傷病者が発生し、通常の出場体制では対応できないもの(以下「集団救急事故」という。)を対象として、救急隊等の効率的な運用と関係機関の密接な連携を保持し、総合力をもって迅速かつ安全に傷病者の救出を図ることを目的とする。
第2条 運用の基準及び対象災害等
この計画の運用基準及び対象災害等は、次表のとおりとする。
運用基準 |
1 傷病者が10人以上発生していると認められた場合 2 救急隊3隊以上を集中的に運用する必要があると認めた場合 3 その他、消防長が必要と認める場合 |
第3条 活動の原則
現場活動においては、警察、医療機関、その他の関係機関と連絡を密接にし、傷病者の効率的な救護に当たるとともに、救急活動においては傷病者の適切な選別(以下「トリアージ」という。)を行い、重症者を最優先として必要な応急処置を施した後、それぞれの傷病者に適応した医療機関へ迅速かつ安全に搬送することを原則とする。
なお、救出に時間を要する傷病者が発生した場合は、現場への医師要請をして、応急処置を受けて搬送するよう努める。
第4条 出場基準及び他機関への応援要請等
消防本部は、第2条の運用基準による集団救急事故と判断される場合は、災害状況に応じて必要な特命出場指令を行うものとする。また、現有の消防力で対応することが困難と判断した場合は、消防相互応援協定等に基づき、関係機関に対して応援要請のほか、必要な処置を行うものとする。
第5条 先着隊による措置
先着隊は、後着隊が到着するまでの間、以下の順位に従い必要な措置を行うものとする。
1 災害(事故)の状況把握と報告
(1) 災害状況の即報(災害発生場所・発生原因・傷病者及び要救助者の人数等)
(2) 二次災害発生危険の有無の確認
(3) 必要とする隊、車両、資器材の応援要請(後着隊等の集結場所の設定)
2 傷病者の救出救護
3 災害現場における警戒区域の設定及び後着隊の進入、退出路の確保
4 状況に応じた、応急救護所の設定
第6条 現場指揮本部
1 設置基準等
(1) 集団救急等の災害時に設置するものとする。ただし、消防長が必要と認めた場合は、この限りでない。
(2) 本部には「指揮本部」の標旗を掲出するとともに、本部員は腕章で表示する。
(3) 本部には、通信障害を軽減するため、可搬型無線機の設置を講ずること。
2 設置場所
現場指揮本部は、以下の事項に留意して災害現場で最も適した場所に速やかに設置するものとする。なお、他の関係機関が出場した場合には、合同指揮本部の設置について、町長又は県知事に要請するものとする。
(1) 現場全体が把握でき、かつ、消防隊の集結に容易な場所
(2) 応急救護所との連絡が容易な場所
(3) 二次災害の恐れのない場所
(4) 通信障害が少ない場所
(5) 関係機関との連絡、調整が容易な場所
3 編成及び任務
現場指揮本部の編成と任務は、表―1のとおりとし活動区域に応じて担当指揮者を指定する。
4 必要な資器材の保管及び搬送
現場指揮本部の設置に必要な資器材は、表―2のとおりとし消防本部に保管しておき、必要に応じて消防車両等又は他機関の車両で搬送する。
第7条 応急救護所
1 設置基準等
(1) 応急救護所の設置は、最先到着隊又は現場指揮本部が状況に応じて設定する。
(2) 集団救急等の災害時については、ロープ等で応急救護所の区域を明示し、トリアージにより搬送順位を指定しておくものとする。
(3) 応急救護所には「救護所」の標旗を掲出するとともに、救護員は腕章で表示する。
2 設置場所
応急救護所の設置場所は、下記の事項に留意して災害現場に最も適した場所に設置するものとする。
(1) 現場指揮本部との連絡が容易な場所
(2) 二次災害の恐れのない場所
(3) 救急隊等の進入、退出等が確保できる場所
(4) 地形平坦で広い場所
(5) 通信障害が少ない場所
3 編成と任務
応急救護所の編成は、表―1に示すとおりで、任務は下記のとおりとする。
(1) 受付け分類班は、救護された傷病者の受付け及びトリアージを行う。
(2) 救急処置班は、救護された傷病者の応急処置をし、医療救護班を要請した場合は、これの補助にあたる。
(3) 救急車運用班は、トリアージされた傷病者状況と、受入医療機関(通信指令室経由)の手配と救急車の有効運用を行う。
(4) 医療救護班(医師、看護師等)は、活動現場、応急救護所及び救急搬送途上において傷病者の診療と応急処置を行う。
4 必要資器材と保管場所
応急救護所の設置に必要な資器材は、表―3のとおりとし、消防本部に保管しておき必要に応じて、消防車両等で搬送する。
5 医療救護班との連携
重症者が多数発生し、救急車への収容に長時間を要する恐れがある現場では、医療救護班の現場派遣を要請するとともに、密接な連携のもとに行動するものとする。
6 トリアージの方法と傷病者の取扱い
(1) トリアージの方法
トリアージは、原則として現場先着隊救急救命士が行い、表―4のSTART法に基づく分類により行うものとして、この結果を図―2のトリアージタッグ(傷病者伝票)により表示する。なお、トリアージ及び記入にあたっては知り得た範囲で記入し、時間の浪費を避け救命率の向上を図ること。
(2) トリアージタッグの処理
トリアージタッグ(3枚複写)の処理については図―3に示す順序で行うものとするが、所要事項の記入については、おおむね以下の要領で行う。
トリアージタッグ | 担当 | 記入事項等 |
1枚目 | 受付分類班 | 性別・程度等記載し、傷病者に貼付するとともに救急救護者一覧表(表―7)に記入する。 |
搬送救急隊 | 搬送開始までに判明した事項及び搬送救急隊名を記載し、救護活動指揮者に提出する。 | |
2枚目 | 搬送救急隊 | 医療機関収容までに判明した事項を記入し、持ち帰り救護活動指揮者に提出する。 |
3枚目 | 救急車運用班 | 搬送先医療機関が未記入事項を記入したトリアージタッグを救急車運用班が事後に回収する。 |
(3) 傷病者の取扱い
傷病者の搬送順位は、トリアージタッグの色により決定する。
① 第1順位(赤) 緊急治療群・最優先治療群
② 第2順位(黄) 非緊急治療群・待機的治療群
③ 第3順位(緑) 軽処置群・保留群
④ 第4順位(黒) 不処置群・救命不能群・死亡群
第8条 各活動隊の編成と任務
各活動隊の編成は、表―1に示すとおりで、任務は下記のとおりとする。
1 救助隊
(1) 最先到着隊がこの任務に当たるが、後着隊到着後は指揮本部の命で編成替えを行いこの任務にあたる。
(2) 傷病者の救出、救護及び二次災害の防止にあたる。
(3) 重篤、重傷者の救出にあたっては、救急隊及び医療関係者と連絡を密にして行う。
(4) 救出救護完了後は、指揮本部の下で情報活動にあたる。
2 支援隊
(1) 消防職員及び消防団員等でこの任務にあたる。
(2) 警戒区域の設定(ロープ等)をし、立ち入り制限をする。
(3) 歩行不能者を応急救護所へ担架搬送し、歩行可能者については介添え等により避難誘導を行い、救護所の受付を介して指定の場所へ収容する。
(4) 必要に応じ災害現場及び傷病者搬送路等の照明作業を行う。
(5) 災害現場、救護所への緊急車進入路の確保と交通整理を行う。
(6) 救助隊の行う救出、救護の支援にあたる。
(7) その他現場指揮本部長の命令に従い資機材の搬送等の活動を行う。
3 消火・警戒隊
(1) 事故状況により、消火、警戒隊を置き二次災害防止にあたる。
(2) 消防職員及び消防団員等でこの任務にあたる。
4 搬送救急隊
(1) 出場救急隊がこの任務にあたる。
(2) 隊長は、現場に到着と同時に、救護活動指揮者に到着の報告をし、必要な下命を受ける。
(3) 現場は著しく混乱することが予想されるので、指揮者の命令により、統制ある行動をとること。
傷病者の搬送にあたっては、応急救護所の救急車運用班との連絡を密にして行う。
(4) 隊長は、搬送開始前に傷病者に表示されているトリアージタッグに必要事項を記入し、1枚目を切り取り救護活動指揮者に提出する。
(5) 傷病者を医療機関へ引き渡した後は、速やかに応急救護所へ引き返し、救護活動指揮者に当該医療機関の収容状況等を報告する。
第9条 消防団への出場要請
集団救急等の災害時又は消防長が必要と認めた場合においては、災害発生地の該当消防分団に出場を要請する。なお、出場後は現場指揮本部長の命令を受けて、支援隊、消火及び警戒隊の任務にあたる。
第10条 通信
図―4の消防通信連絡系統図、久万高原町消防通信運用管理規程(平成17年久万高原町消防訓令第5号)及び久万高原町消防通信運用管理要綱(平成17年久万高原町消防訓令第6号)に基づき、消防通信の万全を図る。
第11条 関係機関への連絡と要請
1 連絡先
消防相互応援協定に基づく応援要請は、及び図1を参照し、様式第3号により行うものとする。また、隣接消防本部、その他の関係機関及び協力機関の連絡先は、表―5及び表―6のとおりとする。なお、自衛隊の災害派遣要請は県知事(消防防災安全課扱い)を通じて行うものとし、DMATの出場要請は、県へ行うものとする。
2 連絡手段の確保
有線通信を原則とするが、回線途絶時にはNTTに非常用架設電話の設置を行うよう要請するものとする。
第12条 報告及び広報
1 報告
2 広報
(1) 住民に対する広報は、災害(事故)現場における二次災害及び活動による被害防止を重点に、状況に応じ拡声器等を活用して行うものとする。
(2) 報道関係者に対する広報は、速報、中間、まとめ等段階的に発表し、発表にあたっては広報担当者が専従して、混乱を招かぬ場所を指定するとともに、発表時間をあらかじめ予告して実施する。
第13条 訓練
以上の計画の円滑な運用を図るため、関係機関の協力を得て、年1回以上の集団救急事故発生時の総合訓練を行うものとする。
第14条 その他
この計画に定めのない事項については、久万高原町消防救急業務取扱規程(平成17年久万高原町消防訓令第26号)及び久万高原町消防救急業務実施要綱(平成17年久万高原町消防告示第4号)に基づくほか、消防長が別に定める。
附則
この活動計画は、平成17年1月1日から施行する。
附則(平成29年6月26日消防告示第2号)
この告示は、公表の日から施行し、平成29年5月1日から適用する。
表―1 災害等現場指揮本部の編成
現場指揮本部長 | 現場指揮本部 | 指揮伝達 (通信) | 部隊の編成任務及び作戦指揮の伝達、無線統制 |
情報収集 (記録) | 避難・救出者状況(人命危険) 収容者の管理状況(救護所から報告) 被害(拡大)状況、危険物等の配置状況 | ||
保安警備 (調達) | 現場本部・救護所の区域設定と警備 交通整理(緊急車の進入路の確保) 資器材調達、二次災害防止区域の設定と警備 | ||
広報 | 住民広報とマスコミ広報 |
表―2 現場指揮本部の設置に必要な資器材
資器材名 | 必要数 | 保有状況 | 緊急 * | 備考 | |
数 | 保管場所 | ||||
テント | 1張 | 1張 | 久消本部 |
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長机 | 2脚 | 2脚 | 〃 |
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折りたたみ椅子 | 5脚 | 5脚 | 〃 |
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黒板 | 1 | 1 | 〃 |
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現場指揮本部標旗 | 1 | 1 | 〃 | * |
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拡声器 | 2 | 2 | 〃 | * |
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携帯無線機 | 3 | 3 | 〃 | * |
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無線仮設アンテナ | 1 | 1 | 〃 | * |
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照明器具 | 1 | 1 | 〃 | * |
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腕章 | 10 | 0 | 〃 | * |
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報告用紙(広報用) | 100枚 | 100枚 | 〃 | * |
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(傷病者記録標) | 〃 | 〃 | |||
関係図面 | 1式 | 1式 | 〃 |
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筆記用具 | 1式 | 1式 | 〃 | * |
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ノート | 5冊 | 5冊 | 〃 | * |
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ロープ(警戒区域) | 2本 | 2本 | 〃 | * |
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原因調査用具 | 1式 | 1式 | 〃 | * |
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表―3 応急救護所の設置に必要な資器材
資器材名 | 必要数 | 保有状況 | 緊急 * | 備考 | |
数 | 保管場所 | ||||
エアーテント | 1張 | 1張 | 久消本部 | * |
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テント | 2張 | 2張 | 〃 |
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長机 | 2脚 | 2脚 | 〃 |
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折りたたみ椅子 | 5脚 | 5脚 | 〃 |
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ロープ(救護所) | 2本 | 2本 | 〃 | * | 50M |
ビニールシート(青) | 3枚 | 3枚 | 〃 | * |
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清水入り携行缶 | 3缶 |
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非常用担架 | 5 | 5 | 〃 | * |
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毛布 | 20枚 | 20枚 | 〃 | * |
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トリアージタッグ | 100枚 | 100枚 | 〃 | * |
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傷病者一覧表 | 10枚 | 10枚 | 〃 | * |
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非常用救急資器材 | 1式 | 1式 | 〃 | * |
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筆記用具 | 10 | 10 | 〃 | * |
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表―4 START法による分類
①歩行可能 | 可能 | 緑 |
②自発呼吸 | なし → 気道開放にて → 呼吸なし | 黒 |
→ 呼吸あり | 赤 | |
③呼吸数 | 9回/分以下、30回/分以上 | 赤 |
↓ | 10~29回/分 | |
④橈骨動脈触知 | 触知不可(※) → | 赤 |
↓ | 触知可能 | |
⑤意識 従命反応 | なし → | 赤 |
あり → | 黄 |
(※)脈を触知しても、微弱・皮膚蒼白・冷汗・頻脈(120回/分以上)のいずれかを伴う場合には、赤と判定してもよい。
表―5 略
表―6 略
図―1 各関係機関との距離と時間
図―3 トリアージタッグの流れ
図―4 消防通信連絡系統図