mono-chrome(モノクローム)
通常、私たちの世界は色彩であふれています。その美しさを再現したいという思いは技術の発達を促し、モノクロ映画・テレビからカラーへ、今や4Kテレビのような高画質の映像さえ身近になりました。
しかし、古来より東洋には「墨に五彩あり」という言葉があり、墨の濃淡や潤渇の度合いによって、人物や動物、山川草木など森羅万象を描き出そうとしたのが水墨画です。視覚的な再現性よりも、抽象的かつ象徴的に世界を表現する技術であり、美意識といえます。
水墨画に限らず、単色―モノクロームの世界は、ストイックであればあるほど観る側の想像力を引出し、視覚を越えた体験をもたらす表現媒体ともいえるでしょう。
今回のコレクション展では、水墨画や版画、素描など、単色で表現された作品を特集します。
板に無数の線や点を刻み込むことによって明暗の調子を生み出していくメゾチントの技法で、静謐な銅版画を描いた浜口陽三(1909-2000)の《キャベツ》、日本画家・横山大観に「神の手」と言わしめた四方田草炎(1902-1981)の黒光りする強い線描が際立つ《婦人像》、彫刻家・多和圭三(1952-)の空間を刻むかのようなドローイングなど。
黒と、その運動によって形作られる白い空間が生み出す、リアリティと非リアリティのせめぎあいをご覧ください。
洋画では、日本の近代洋画を代表する高橋由一や黒田清輝らの作品、さらに大正・昭和初期の前衛画家・村山槐多や岸田劉生、萬鉄五郎らの作品を展示します。また、伊予にゆかりの書画や砥部焼を中心とした伊予のやきものもご覧いただけます。
2016年11月27日(日曜日)~2017年4月23日(日曜日)