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コレクション展28年度1回目

ページID:0001086印刷用ページを表示する2017年10月19日更新

過去のコレクション展一覧

H28久万美コレクション展1

路上≠日常―坪内晃幸の実存

路上≠日常―坪内晃幸の実存の画像

趣旨

「具体美術は物質を変貌しない。具体美術は物質に生命を与えるものだ。具体美術は物質を偽らない。具体美術に於ては人間精神と物質とが対立したまま、握手している。物質は精神に同化しない。精神は物質を従属させない。物質は物質のままでその特質を露呈したとき物語りをはじめ、絶叫さえする」(吉原治良「具体美術宣言」/1956年)

今から約60年前の1957年4月、坪内晃幸(1927-2005/松山市)は「具体美術協会」のメンバーとなりました。具体美術協会とは1954年、吉原治良(1905-1972)をリーダーに結成された関西の前衛美術グループです。吉原の「人のやらないことをやれ」という方針の下、野外や舞台を使った破天荒な活動は、環境芸術やアートパフォーマンスの先駆と目され、近年、その独創性と質の高さに改めて注目が集まり、国内外で数多くの回顧展が開かれています。

初期の中心メンバーには、足で描く白髪一雄(1924-2008)や、絵の具を詰めた瓶を投げつけて描く嶋本昭三(1928-2013)らがいました。坪内は彼らの激しい物質感と身体性を宿した作品とは一線を画した思索的な絵画作品を制作していました。しかし、72年の吉原の死後、道路標識の「40」と出会います。

「日本国内の道路の規制標識のうち、制限速度40kmの道路標識と道路標示はすべて作品である」との宣言を行い、松山市内の同じ場所の道路標示「40」を10年に渡って撮影し、大判のプリントに焼き付けました。

普段、人が意識して見ることのない「40」に「物質は物質のままでその特質を露呈したとき物語りをはじめ、絶叫さえする」と、「具体」を見出した坪内は、人々の目を日常に向かわせるための装置をさまざまに模索します。

そして最晩年には、段ボールの表面を剥ぎ、波状の中芯を露わにする作品を生み出します。摩耗する道路標示や剥された段ボールは、物理性を伴う形で私たちに「日常」の在処と同時にそのゆらぎを思わせます。

坪内の創作の原点には、敗戦により価値観が崩壊した後の世界を如何に生きるかという問いがありました。未曾有の大災害、複雑化する国際紛争など、既存の社会システムがゆらぐ現代において、ここにある「日常」ははたしてどのように存在するのか。人間存在の在り方を物質を通して考えた坪内が見出した剥き出しの「路上≠日常」を、今再び見つめてみてはいかがでしょうか。

本展では、代表作40シリーズの他、2011年開催の「40坪内晃幸-追い求めた具体」展以降に収蔵した作品を初公開します。

その他の展示

洋画では、日本の近代洋画を代表する高橋由一や黒田清輝らの作品、さらに大正・昭和初期の前衛画家・村山槐多や岸田劉生、萬鉄五郎らの作品を展示します。また、伊予の書画や砥部焼を中心とした古い伊予のやきものを展示します。

会期

2016年3月26日(土曜日)~6月5日(日曜日)