松竹梅の文化史
今回の特集展示では、「松竹梅」や「松」「竹」「梅」をモチーフにした書画ややきものを展示します。
長寿や幸福を言祝ぐモチーフとして私たちの日常生活に浸透している「松竹梅」。そのような認識は、江戸時代前期にはすでに定着していたようです。しかし、「松竹梅」には吉祥の意味だけでなく、文人精神の象徴というもう一つの意味があります。「松竹梅」はもともと、中国において、厳冬のなか常に変わらぬ緑を保つ松竹、寒さの中いち早く香り高い花を咲かせる梅を、逆境にも節を曲げない高貴な人格の象徴として、「歳寒三友(さいかんさんゆう)」と称したところから始まります。それらは、やがて詩に詠われ、絵画や器物の文様として私たちの文化を彩ります。
「松」「竹」「梅」の植物を尊ぶ文化は、日本には奈良時代に伝えられました。日本にもともとあった松竹を聖なるものとする考えと融合し、室町時代からは強い生命力を表す松に成長の早い竹を添えてお正月の門松に用いるなど、めでたい植物として親しまれるようになります。また、「松竹梅」を一具として捉える見方は、鎌倉時代に伝えられました。室町時代以降は、文人士大夫の理想像、君子の象徴として詩や絵画の重要なモチーフとなっていきます。
「松竹梅」のイメージ、そこから生みだされた美意識は、中国で生まれ日本・韓国で共有されています。その意味で「松竹梅」は、東アジアの文化的風土の精髄であると言うことが出来るでしょう。冬の厳しい寒さに耐え、時の流れにも変わらない美しさを分け合う「松竹梅」の文化を今、改めて見直すことは、吉祥への祈りであるとともに、厳しい時代を生きる私たちにとって希望となりうるのではないでしょうか。
出品数25点
洋画では、日本の近代洋画を代表する高橋由一や黒田清輝、萬鉄五郎らの作品を、日本書画では新年を言祝ぐ伊予の書画を展示。その他、近世から近代にかけての砥部焼を展示します。
2011年12月3日(土曜日)~2012年2月19日(日曜日)